四日市市長
森 智広
四日市市長の森智広です。四日市コンビナート先進化検討会事務局の四日市市を代表して、一言ご挨拶申し上げます。
本市臨海部のコンビナートは、エネルギー・素材の安定供給および地域産業の発展のため、環境との調和を図りながら発展してきました。一方で、四日市コンビナートを始めとする、石油化学産業は、国内の人口減少による需要減や、国際競争の激化、地球環境問題におけるCO2排出抑制、シェールガスの産出増など、今後、これらの環境変化への対応も重要となってまいります。
本市におきましては、これまで、四日市コンビナートの競争力強化を実現させるという共通認識のもとで、平成13年にコンビナート企業の皆さまと行政による「四日市市臨海部工業地帯再生プログラム検討会」による取組みなど、全国をリードするコンビナートとして積極的な活動を行ってきたところです。
そのような中で平成30年度より、4つの基本目標(国際競争力の強化、新規技術の活用による安心・安全の確保、有能な技能者を育成する教育、地球環境負荷の軽減)を達成することで四日市コンビナートの先進化を果たすべく、「四日市コンビナート先進化検討会」による取組みを進めてまいりました。この検討会では、企業の皆さまに企業の枠を超えて、地域の知恵や革新的な技術を結集し、新たな企業間連携の可能性の検討や、円滑な操業に向けた規制の合理化に関する施策立案の取組み、安全確保のための新技術導入への取組み等について、検討していただいております。
また、企業の皆さまのみならず、成城大学教授平野創様や関係行政機関として、経済産業省中部経済産業局様や三重県様からも、本検討会の効果を高めるために積極的にご協力をいただいており、四日市市を代表して感謝申し上げます。
現在は検討いただいた事項について、実行に移していく段階になっていると考えておりますので、企業の皆様方と行政が協力して、より大きな成果に結び付けていけることを大いに期待しております。そして、この石油化学産業の構造変革を絶好の機会と捉え、四日市コンビナートの産業基盤の強みを存分に活かし、四日市ならではの更なる発展が実現できることと確信しております。
最後に、四日市コンビナートの先進的な取組みを他地区のコンビナートにも拡げ、最終的には国内全体のコンビナートの競争力強化にも繋がることを祈念して、私の挨拶とさせていただきます。
四日市コンビナート先進化検討会会長
平野 創
四日市コンビナート先進化検討会の会長を務めております成城大学の平野創です。
経営史(特に化学産業、石油産業等の重化学工業やコンビナートの歴史)を専門としています。こうした歴史的文脈に関する知見を活かし、コンビナートの競争力強化に向けた取り組みに携わっています。ここ四日市のみならず、鹿島コンビナート(鹿島臨海工業地帯競争力強化会議)や京浜コンビナート(川崎臨海部活性化推進協議会)、経済産業省の総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会石油・天然ガス小委員会委員等も兼務させて頂いており、各地域や国の産業政策の動向も踏まえ、皆様方とともにここ四日市コンビナートの先進化を実現する一助となるべく活動して参りたいと考えております。
近年のコンビナートを取り巻く環境は、穏やかとは言い難い状況にあるものの、出荷額や付加価値生産額を概観すると日本のコンビナートはその競争力を維持しています。一方で、新興国の競争力向上による競合の激化、設備の老朽化、技能伝承に関わる困難、温室効果ガスの排出削減など様々な問題に直面しています。グローバルなサプライチェーンの寸断リスクなどを考慮しますと、国内生産の維持も重要な政策課題であると考えられます。こうした環境下で企業間の連携強化は、コンビナートの競争力維持・強化に向けて欠かすことのできない取組です。
四日市コンビナート先進化検討会は、個々の企業が直面している諸課題をコンビナート全体の課題として捉え、行政と一体となって議論し、解決へ向けて行動しています。本検討会の優れた特徴としては、企業が主体的に議論を進め、それを行政がしっかりと支える形で運営されていることにあります。企業側と行政側が両輪となって競争力強化へ向けて自律的に取り組み、新たな挑戦を続けています。年度内に各社が取り組むべきロードマップを作成し、その進捗状況を各社で共有している点も本検討会の魅力の一つと感じています。
さて、今後のコンビナートの発展に向けて、重要な論点は「IoT、水素、地域間連携」であると考えています。IoTやビッグデータの解析技術の導入等に際しては、コンビナート企業間の連携と情報共有の実現により、知識や技術の蓄積が加速され、競争力の強化につながると考えます。また、地球環境を保全しつつ持続が可能な産業や開発を行う、いわゆる「サステイナブルな社会」に向けた企業の取組として、CO2フリーの水素の活用も重要な視点です。
しかしながら、水素活用には、輸送コストや法規制によるインフラ整備コスト、需要家の開拓・拡大などの解決すべき課題が多数残されています。個社では対応が困難であるこうした問題を企業間連携、行政支援のもとに乗り越えていく必要があります。最後の論点である地域間連携については、すでに四日市コンビナートなどにおいて人材育成の側面で実施されつつあります。今後のIoTやビッグデータの導入、水素社会の実現に向けて、知見の共有など地域間連携が果たす役割は、より一層重要になるものと考えられます。
最後になりますが、四日市コンビナート先進化検討会での取組みが実を結び、より生産性が高く、安全な事業所が実現することによって、四日市コンビナートの競争力強化と地域が発展すること、さらには日本のコンビナート全体が活性化されることを祈っております。